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シチュエーション別キャンピングカー選び 第18回
フィアットデュカトベースの欧州バンコン


フィアットデュカトベースの輸入キャンピングカーというと、キャブコンタイプが主流だが、バンコンタイプも徐々に充実してきた。
2015年2月のジャパンキャンピングカーショーにハイマーカーから、シドニー、グランドキャニオンの2モデルがはじめて出品されたが、それ以前からも、アドリアモービル(以下アドリア)をはじめ種々のモデルが輸入されている。

さて、それぞれのモデルを見る前に、デュカトについて、少し見てみよう。
デュカト(デュカートと書かれている場合もあるが、各ビルダーの公式日本サイトにはデュカトと書かれているので、こちらを採用)は、イタリアのフィアット社の商用バンで、現在のモデルは2014年にモデルチェンジされたもの。(写真下左が旧モデル、右が新モデル:Wikipediaより)
フロント周りのデザインが変更されている。


欧州のキャンピングカーのベース車としてほぼ独占状態であり、キャブコン、バンコンはもちろん、フルコンのベース車としても使用されている。

エンジンは2.2L、2.3L、3.0Lディーゼルがラインアップされる。
ホイールベースは、3000、3450、4035mmの3種類。
車長は、ショート(4963mm)、ミドル(5413mm)、ロング(5998mm)、エクストラロング(6363mm)の4種類、車幅は全車2050mm。
それと、スタンダードルーフとハイルーフの組み合わせで、5車種がラインアップされている。
1 ショートボディ スタンダードルーフ 
2 ミドルボディ スタンダードルーフ 
3 ミドルボディ ハイルーフ
4 ロングボディ ハイルーフ
5 エクストラロングボディ ハイルーフ

ミッションは6速マニュアルがベースだが、これをオートマティック車のようにコントロールできるコンフォートマティックも用意されている。
欧州ではマニュアル車が一般的だが、オートマティックが中心の日本用にはこのコンフォートマティック車が主に輸入される。

また、右ハンドル車も用意されており、販売店によるが、選択することができる。
駆動系は全てFFで4WDは無い。

キャブとシャシーだけのモデルも提供されているので、コーチビルダーはこれを使用してキャブコンを作ることもできる。
即ち、バンコンにもキャブコンにも対応しているのである。


このデュカトを使用したバンコンモデルは、日本へは主にアドリアとハイマーカーから輸入されている。
それぞれ、日本法人のアドリアモービルジャパンとハイマージャパンが日本の窓口となっている。

今回は、フィアットデュカトベースの欧州バンコンを代表するアドリアとハイマーカーのモデルを取り上げる。

アドリア(2015年モデルラインアップ)
・ツイン540SPT
・ツイン600SP
・ツイン600SPT
・ツイン600SP GB
・ツイン640SHX

ハイマーカー
・シドニー
・グランドキャニオン

アドリアはスロベニアのコーチビルダーで、フルコン、キャブコン、トレーラー、そして今回紹介するバンコンまで、多くのモデルを生産している。
ハイマーカーは、ドイツに拠点を置くハイマーの関連会社で、主にバンコンモデルを生産している。

ラインアップ
アドリアは、2016年ラインアップを発表した。
ツインの新しいラインアップは、基本的に従来と大きく変わらなく、ツイン500(全長4963mm)、540(5410mm)、600(5998mm)、640(6363mm)の4種類のサイズを揃え、500と540に各1種、600と640に各2種類のレイアウトを用意している。
従来、日本へは500を除く3サイズが輸入されている。


一方、ハイマーカーでは、シドニードライブとシドニー(4960mm)、セレンゲティ、エアーズロック、リオ(5410mm)、グランドキャニオン(5998mm)、イエローストーンとシエラネバダ(6363mm)の4サイズ8モデルがラインアップされる。
ハイマーカーでは大きく、サニタリールームを持つモデルと持たないモデルに分けられており、上記のうち、シドニードライブ、シドニー、リオの3モデルはサニタリールームを持たない。
日本へはシドニー(写真下左)とグランドキャニオン(写真下右)が輸入されている。


両社とも、全サイズをラインアップし、キャンパーバン(バンコン)の代表的なコーチビルダーと言える。

コンセプト
アドリアとハイマーカーで大きく異なるのがポップアップルーフの有無。
アドリアではポップアップルーフを架装したモデルが存在しないが、ハイマーカーでは全てのモデルにポップアップルーフがオプション設定されている。
(シドニーはシドニードライブのポップアップ架装モデル)

デュカトはポップアップルーフを架装しなくても約2mの天井高があり、窮屈感は全くないので、ポップアップルーフは不要に思える。
しかし、ポップアップルーフには就寝人数を増やせるというメリットがある。
即ち、バンコンモデルでもファミリーの選択対象になりうるのだ。
ハイマーカーの狙いもそこにある。

では、アドリアがファミリーに対するソリューションをどうしているかと言うと、ツイン640をハイルーフにして上段ベッドが設置できるようにしている。(写真下)


しかし、ツインの他のモデルはカップル用に限られてしまう。
(ツイン600はダイネット展開して1名用エクストラベッドをセットできる)

もう一つの違いはサニタリールーム。
アドリアでは、最も小型のツイン500にも温水シャワー付きサニタリールームが装備されるが、ハイマーカーの最小モデルであるシドニードライブとシドニーにはサニタリールームは無い。
更に、ワンランクサイズの大きいモデル(リオ)にも設定が無い。
サイズがどんなに小さくてもシャワールームが必要と考えるアドリアに対し、ハイマーカーでは割切っている。

その代り、シドニーとシドニードライブでは後部に快適なベッドを確保している。
ツイン500ではダイネットシートを展開してベッドにするため、快適度は劣る。
シャワールームを取るかベッドを取るかで考え方が異なっているのである。

レイアウト
どちらも、と言うか、欧州車ではレイアウトは、細かい点で異なる部分はあるが、大きくは同じである。
即ち、前部に対座ダイネット、後部にベッドルーム、その間にギャレーとサニタリールームというのが定番。
(下は左からツイン540SPT、600SP、640SHX)


(下は上がシドニー、下がグランドキャニオン))


ツイン500やシドニーのような最小サイズのモデルでは、その定番レイアウトが確保できないので、変則的になっているが、それ以上のサイズのモデルではほぼ同じレイアウトと言って良い。

日本のバンコンのように、L字型ソファのダイネットとか、2段ベッドなど、多種多様なレイアウトが提案されているわけではないのだ。

しかし、その割には、細かいところで選択肢を増やしている場合もある。
その一例が、ツイン600SPと600SPT。
違いはサニタリールームのスライドドアが通路まではみ出しているか、いないかの違い。
どちらかに統一しても良いように思うが、そこはこだわっているのである。
(下は左がツイン600SP、右が600SPT)


ダイネット

欧州車のダイネットは、運転席、助手席が回転して後ろ向きになり、2列目シートとで対座する形が多い。
停泊中のスペース効率を上げる手法として効果的で、これがスタンダードになっている。

アドリアとハイマーカーのバンコンモデルも同じで、全てのモデルが同じ形態を持つ。
(写真下左がツイン600SP、右がグランドキャニオン)
ただ、就寝定員が2名のモデルでも4名対座のダイネットがカタチ通り装備されている。
ゆったりしたラウンジソファのモデルがあっても良いのではと思うのだが。


なお、唯一違いを出しているのがシドニーとシドニードライブ。
最小サイズのモデルなのに、上位モデルよりも多い5名乗車を可能にしている。(写真下)
このあたりは、コンパクトバンコンもファミリーに売り込む、というハイマーカーのストラテジーかもしれない。


ベッド

デュカトは後部に観音開きのドアがあるので、各車、これを生かして後部から自転車などが積み込めるようにしている。
しかし、後部はベッドルームになっているため、ベッドを跳ね上げる機構が付いている。
デュカトを使用したキャブコンなどではあまり見ない機能であるが、バンコンモデルのアドバンテージと言っても良い。(下は左がツイン600SP、右がグランドキャニオン)


アドリアのモデルはツイン500を除き、全て横方向就寝のダブルベッドである。
車幅が2050mmもあるので、ハイエースのように拡張ボックスで窓埋めしなくても、車幅方向の就寝が可能なのだ。
ハイマーカーは、一番大きなサイズのモデルは縦方向就寝のツインベッドを採用しているが、日本に輸入されているグランドキャニオンは、横方向就寝のダブルベッドである。
(下は左がツイン600SP、右がグランドキャニオン)


ルーフベッド

ポップアップルーフを持つハイマーカーのモデルでは、ルーフベッドが使用できる。
グランドキャニオンのルーフベッドは2020x1500mmで日本の家庭用ダブルベッドのサイズよりも大きい。
なお、オプションで防寒対策カバーが用意されている。


ギャレー
車体の大きさにより、シンクとコンロが一体になったコンビネーション型か、それぞれが独立したセパレート型かの違いはあるが、どのモデルも2口バーナーを持つコンロと大き目のシンクが用意されており、普通に料理ができることを前提にしている。

冷蔵庫も小型のシドニーやツイン500でも65リッター、ツイン600では70リッター、グランドキャニオンでは108リッターが装備される。
日本のバンコンと対照的なのは電子レンジがオプションでも用意されていないこと。
日本製のものを日本で取り付けとなる場合が多いようだが、設計段階で取り付け場所も意識されていないように見える。
(下は左がシドニー、右がツイン540)


サニタリールーム
滞在型のキャンプが多い欧州では、温水シャワーの使用は普通のことで、キャブコンはもちろん、バンコンでも装備しているモデルの方が多い。
バンコンでは、さすがにシャワールームとトイレルームが別のものは無いが、両者をうまく狭いスペースで両立させている。
最小のツイン500でも給水タンクは60リッター、排水タンクは40リッターだし、ツイン600では100リッターと90リッター、グランドキャニオンでは給排水タンクとも100リッターである。
湯沸しはトルマのボイラー/ヒーターが採用されており、ガスで10リッター程度の湯を沸かし、水と混合して使用する。
(下は左がツイン600SP、右がグランドキャニオン)


ストレージスペース

どのモデルもオーバーヘッド収納、ギャレーコンソールの引き出し収納、クローゼットなど充実している。
シドニーの後部左側の収納キャビネットがそっくりそのまま取り外せるのはユニーク。(写真下)
取り外した後には大きいな積載スペースができるので、トランポ的な使い方も可能だ。


インテリア

ツインシリーズは、チタンとフォレストの2種類の家具色を選択できる。(写真下左がフォレスト、右がチタン)
またシートも5種類から選択が可能で、選択の幅が広い。
日本ではチタンへの変更、レザーシートへの変更はオプション。
ハイマーカーのシドニーとグランドキャニオンは、家具色は明るい木目調のみだが、シートカラーは7種類から選べる。


エクステリア
ツインシリーズは、6種類のボディカラーから選択可能。
シドニー、グランドキャニオンは11色から選択できるが、ホワイトが標準でボディーカラー変更はオプション。
最近は、キャンピングカーでも色のバリエーションが選べるようになってきており、それが増える傾向にある。

ベース車
日本へ輸入されるツインシリーズのベース車、フィアットデュカトは2.3Lディーゼルターボが標準となっているが、オプションで3.0Lへの変更が可能。
なお、右ハンドルは左エントランスの600SP GBのみ選択できる。

日本向けのシドニーとグランドキャニオンは、どちらも3.0Lが標準。
右ハンドルは、オプションで選択できる。

価格
ツイン600とグランドキャニオンが同サイズなので比較してみよう。
ツイン600SP 7,280,000円(税別)
グランドキャニオン 8,700,000円(税別)
となっている。(2015年9月現在)
ただし、ツイン600SPは2.3L、グランドキャニオンは3.0Lである。
ツイン600SPはオプション(30万円)で3.0Lにグレードアップできる。
また、グランドキャニオンは、オプション(約70万円)でポップアップルーフを追加可能。

その他の装備は、以下の比較表を参照していただきたいが、やはりハイマーカーのグランドキャニオンが、「ハイマー」ブランドの分、高価である。
逆に言えば、アドリアのツインシリーズは、コストパフォーマンスが高いと言える。

お勧めは、ふたり旅ならツイン540SPT。
ハイエーススーパーロングと同程度のサイズで、なんとかスーパーや都市部のコンビニに入れる。
取り回しは多少悪くてももう少し広い方が良ければツイン600SPかSPT。
ダイネットを展開すれば3名まで就寝できる。
ファミリーで使いたいなら、グランドキャニオンのポップアップルーフ付き。
6m以内に収まり、4名が就寝できる。
この価格なら国産のキャブコンが買えるが、キャブコンに比べれば、比較的安価にハイマーテイストを味わえる。
ただし、この価格になるとアドリアのキャブコンもターゲットに入ってくるが。

ビルダー アドリア ハイマーカー
車名  ツイン600SP  グランドキャニオン
ポップアップルーフ - OP
ナンバー区分 8 8
乗車人数 4 4
就寝人数 3 2/4(OP)
ベース車 デュカト2.3L
OP(3.0L)
デュカト3.0L
サブバッテリー ○(100Ah) ○(95Ah)
バッテリー増設 - OP(190Ah)
走行充電システム
外部100V入力
インバーター OP(300W) OP
高電力インバーター OP(1500W) OP
ルーフベンチレーター OP
ソーラーシステム OP -
 リアベッド(mm)
 1960x1450 1950x1450 
 ダイネットベッド(mm) 1600x940 
コンロ ○(2口) ○(2口)
シンク
給水タンク ○(100L) ○(100L)
排水タンク ○(90L) ○(100L)
冷蔵庫 ○(97L)
OP(145L)
○(108L)
電子レンジ OP -
サニタリールーム
カセットトイレ
FFヒーター
ルームエアコン OP(ルーフ) OP(ルーフ)
シャワー設備
温水装置
発電機 - -
サイドオーニング OP OP
全長(mm) 5998 5990
全幅(mm) 2050 2050
全高(mm) 2580 2550
価格(万円)
728 870










2015.09.02







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